2015年6月16日火曜日

巨大投資銀行(バルジブラケット)

文庫版でも1000ページ以上に及ぶ大著、
巨大投資銀行(バルジブラケット)」
黒木亮著、2008年、角川書店
を週末に読了しました。

巨大投資銀行は、1980年代半ばに日系都市銀行からNYの投資銀行へと転職をした主人公が、米国での金融手法を駆使して日本企業向けの投資銀行業務である合併買収、資金調達、運用提案を通じて合併買収の専門家となります。そしてバブル頂点の東京へ合併買収の専門家として赴任し、バブル後の不良債権処理にビジネスチャンスを見出し、実績を積み上げて成果主義の米系投資銀行の中で生き残っていくのですが恩師の言葉に打たれて日系銀行における投資銀行業務の育成に力を注ぎ、さらには日本の金融機関健全化に前向きに取り組むというストーリーでした。
同時並行的に米系金融機関で役員にまでなった伝説の日本人裁定取引トレーダー、そして米系・欧州系金融機関でセールスとして多大なる実績を上げ続ける日本人が並行して描かれます。

1980〜2000年代は金融工学の導入や計算機システムの機能向上による取引手法の多様化、合理化が押し進められた時代でした。バブルに沸く日本、米国で開発され続ける金融手法、そしてバブル後の不良債権処理からエマージングマーケットに視線を向ける時代と移り変わる金融業界の変遷が具体的に描かれていました。

金融業有資格者として読むと、米系、欧系、日系金融機関のビジネスの変遷、商品設計、歴史を通して全てが学びに通ずる大変スリリングな本でした。一応フィクションではありますが、実在の組織、人物、取引案件、事件がベースとなっていて、膨大な量の取材を元に記された本であることが容易に想像出来ます(その取材量については全く想像もつきませんが)。

成果が全てのある意味フェアな米系金融機関という戦場で本性をむき出しにして必死で戦う人々、政治力を駆使してまた違うフィールドで争う人々、どちらが向いているかは人それぞれかと思いますが、不正に手を染めず真摯に仕事に向き合う主人公はまさに金融業者の良心。とても爽やかで前向きに映りました。

自分の考えを話せなければ人ではないとでもいうような目線で見られることも当たり前のいま、打たれ強い精神力だけは向上したかと思いますが、猛然と勉強したい気持ちが湧いてきました。インドにいるからこそできることが明確になったような気がします。2005年出版の書籍で大変古い本ではありますが、読めて良かったです。



在ムンバイの方、ご興味ありましたらお貸しできます。

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